事務所選びのポイント
遺言書の作成は専門家に相談しましょう!
遺言書はご自身で書いて作成することもできますが,遺言書作成に関する法律のルールは非常に厳しいです。
例えば,全文自署しなければいけませんし,加除訂正のやり方も厳格に定められています。
一つでも誤ると無効になってしまい,せっかく作った意味がなくなってしまうどころか,相続人間で有効・無効を争う火種になってしまいかねません。
せっかく作った遺言書が,「あっても困る」遺言にならないように,専門家に相談しましょう。
専門家のなかでも相続案件を中心に取扱っている弁護士をお勧めします!
最近では,遺言書の作成を弁護士だけではなく,行政書士や司法書士,税理士等も行っているようですが,なかには不慣れな専門家がいることに注意が必要です。
例えば,子が親より先に亡くなってしまった場合,親から子に財産を相続させる遺言書を作っているだけでは,孫が相続することはできません。
孫に相続させるためには,「仮に先に子が亡くなった場合は,孫に相続させる。」旨の予備的条項を設けておく必要があります。
しかし,遺言書作成に不慣れな専門家のなかには,このような基本的条項に関するアドバイスが漏れていることも多いようですので注意しましょう。
相続案件を中心に取扱っている弁護士は,予備的条項が漏れていたために争いになったというケースに関わることもありますので適切にアドバイスできると思われます。
ただ,行政書士・司法書士・税理士等のように紛争解決には関わることのできない専門家や,相続案件をあまり取扱ったことのない弁護士の場合は,注意が必要ですので,専門家のなかでも相続案件を中心に取扱っている弁護士への相談をお勧めします。
遺言書作成では相続税にも配慮が必要です!
相続では,誰が誰にどの財産を相続させるのかによって相続税が大きく異なります。
例えば,配偶者の税額軽減特例を利用した場合,配偶者の取得した財産が1億6,000万円までは相続税がかかりませんし,1億6,000万円より多くても,法定相続分以内であればやはり相続税はかかりません。
他にも,土地の評価を最大で8割減する小規模宅地等の特例など,相続税が大きく異なる特例があります。
このような特例の適用を考慮したうえで遺言書を作成しなければ,せっかく遺言書を作っても,相続人が過大な相続税を支払わなくてはならない事態になりかねません。
そのため,遺言書作成は,相続税にも強い弁護士にご相談されることをお勧めします。
民間業者と専門家の違いにご注意!
最近では,遺言書の作成について,銀行や不動産会社,保険会社等の民間企業等も積極的に行っているようです。
ただ,民間企業の第一の目的は営利追求にありますので,企業の利益から完全に離れた第三者の立場としてアドバイスすることは難しいようです。
例えば,銀行であれば預貯金をどこの銀行・支店に預けるか,保険会社であればどこの保険会社のどのような保険プランに入るべきか,あくまでも自社の商品を売るための手段として遺言書や相続のご相談にのることが多いようです。
弁護士等の専門家であれば,完全な第三者の立場から,お客様にとって最適なアドバイスができますので,弁護士にご相談されることをお勧めします。
遺言執行までしっかり面倒を見てくれるところを選びましょう!
遺言書は,作成すれば終わりではなく,遺言作成者が亡くなった際に,遺言書の内容を実現する必要があります。
この手続きを「遺言執行」といいます。
遺言執行では,相続人全員に通知を送って連絡を取ったり,遺言作成者の預貯金や不動産,株式等の名義変更を行ったりするなど,手間暇がかかりますし,不動産登記に関する専門的な知識等も必要になります。
また,それだけではなく,相続人の一人が遺言執行者として指定されていると,「お前が遺言書を無理矢理書かせたのだろう。」とトラブルの元になることもあるようです。
そのため,弁護士に遺言執行者を指定しておかれることをお勧めします。
また,大抵の場合,遺言書作成から遺言執行までは長いと何十年も時間がかかりますので,遺言執行者を個人の弁護士にしていると,その弁護士が事務所を辞めていたり年齢や病気等の理由で廃業していた場合は,執行手続ができなくなってしまいます。
そこで,最後までしっかり面倒を見てくれる弁護士「法人」を選びましょう。